寸評:ロバート・ラドラムはアメリカでは大ベストセラー作家だが日本では余り人気がないとのことだが、何作か読んでみると作品の出来不出来のばらつきが大きすぎるのが気になる。またストーリー展開が一元的なのも最近の流行じゃない。「エバ・ライカーの記憶」はいわゆるタイタニックものだが面白かった。掘り出し物だろう。ジャック・ヒギンス、ケン・フォレット、フリーマントルはどれも面白い。これから古本屋で在庫を探すのが楽しみ。
「神の狩人」も掘り出し物。これはいわゆる「ネット小説」なのだが、日本の同種の作品と違って筆者のようなネットにもコンピュータにも通じている人間が読んでも、内容(要するに技術的な部分の記述)がちゃんとしているので白けることがないのが良い。日本のネット小説の場合、作家がまるでネット音痴、コンピュータ音痴なので、読んでいると嘘だらけで苛々して来るのだ。
トム・クランシーの待望の新作は正直なところ期待外れ。もともと、クランシーは極右傾向が強く、かなりの白人偏重主義者だが、それが極まっちゃった感じ。クライマックスも余りにも中国(と言うかアジア人全般)に対する偏見及び蔑視が強すぎるので展開に無理がある。全体の情報量は例によって物凄いのだが日本人が読むと浸りきれないのである。
売れに売れているパトリシア・コーンウェルなので一作目(「検死官」)を買ってみたのだが、これも大外れ。最初の30頁ぐらいでやめてしまった。何故かというと、主人公本人の離婚だなんだの屈折した心理分析の記述が多すぎるのだ。こっちが読みたいのは殺人事件そのものに関連した話であって、主人公のぐちゃぐちゃした話を延々と語られても興醒めなのである。しかし、売れているんだから、世の中の人はこのぐちゃぐちゃが好きなのだろうか? 筆者には理解出来ない世界だ。 |