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横須賀を出発する米原子力空母キティホークを護衛する自衛艦のニュース映像を見て、思わず「(海上)自衛隊員は嬉しいだろうなぁ」と思った。国防を担いながら憲法で否定された世界でもまれな存在でありながら規模は世界有数という不思議な軍隊=自衛隊の実像である。
様々な障害を基本的には一切無視して「湾岸戦争の轍だけは踏みたくない(c)中川防衛庁長官」と言う非常にわかりやすいモチベーションから今回の事態になったわけだが、政治思想的には中道右派の筆者としては当然のことと受け止めている。土井孝子の発想では日本は国際社会から取り残されるからである。 |
それにしてもほんと、自衛官は嬉しいだろうと思う。後は政府がきちっと法整備して「後方支援活動は良いが、どのような場合にも発砲は禁止」とかそう言うアホらしい非現実的な状況にならないように努力すべきである。カンボジアPKOの時のような漫画みたいな事になっては困る。現在の自衛隊法では自衛隊は直接的に発砲されない限りは撃ち返せない。つまり自衛艦が被弾し自衛官が実際に殺されてからでなければ反撃できないのだ。だから、こちらから出来ることはまるっきり効果のない威嚇射撃ぐらいだと言うのは北朝鮮不審船取り逃がし事件の時に国民全員がテレビで見ている。
これは未だに警官が発砲すると新聞の見出しでそのことが一番大きな活字になるのと同じぐらいの国際的非常識である。 |
9月22日土曜日の朝10時から2時間。フジTVで全米民放4局同時生中継の同時多発テロチャリティ特別番組「Tributu to the Heros」を同じく同時生中継した。2時間コマーシャル無し。拍手喝采の快挙である。日本側のスタジオのコメンテーターの割込みが無ければそれこそ完璧だったが。
但し肝心の番組内容は今ひとつ。そう感じてしまった原因の大半は歌と演奏の殆どが「当てレコ」つまり口パクつまり予め録音された歌と演奏に合わせていたからである。一番最後のウイリー・ネルソン(及び出演者全員の合唱シーン)と、途中のスティングだけは「生」だったが。
しかし誰でも顔と名前が一致する大スターたちがひな壇に並び、チャリティの申込の電話を直接受けると言う演出はうまい。また曲の合間に出てくるスーパースターたちのスピーチもお見事。勿論、原稿はスピーチライターが書いたものだろうが、それにしてもみんなかっこいい。カメラ(実際にはプロンプター)を真っ直ぐ見て、救助活動にあたって命を落とした人々を称える。下を向いてぼそぼそ喋る日本のミュージシャンやスポーツ選手とは大違いである。ラストに近くなるに従って、コメンテーターが大物になる。ジュリア・ロバーツ(既に個人で200万ドル=2億3000万円の寄付をしたんだそうな)、ロバート・デニーロ、そして極めつけがクリント・イーストウッド。正に正義の味方ダーティ・ハリー登場という感じ。途中のモハメッド・アリ(パーキンソン病で手の震えは止まらないが喋りはしっかりしているし、そもそも彼はモスリム=イスラム教徒である)も感動もの。
同じ事を日本でやったらどれ程ダサくなるかは容易に想像が付くし、実際、いつぞやの日本版「We are the World」は話にならないほどに酷かったが、とにかく、今回の「Tributu to the Heros」ほど短時間で企画して実行出来て金が掛かっていて収益効果が大きいチャリティってのは過去にないだろう。エンターテイメントが重要な輸出産業の一つであるアメリカの底力を見せたという感じである。 |
そう言えば、同時多発テロの影響でアメリカでは「天国への階段」や「イマジン」が放送禁止候補リストに載ったと言う信じられない話題が流れたが、「Tributu to the Heros」に出演したニール・ヤングは「イマジン」を歌い、ポール・サイモンは「明日に架ける橋」を熱唱した。ミュージシャンたちはテロに対する抗議と同時に、表現の自由への抗議もしっかりと果たしたようである。 |
ところで。
1991年の湾岸戦争の時の報道を思い出してみよう。アメリカを中心とする多国籍軍は開戦準備に5ヶ月をかけた。この間のマスコミ報道はひたすらイラク軍の脅威を強調していた。曰く
- 地下深い秘密基地
- 生物化学兵器の恐怖
- ソ連製戦車と塹壕を組み合わせた堅固な陣地
- 狂信的忠誠心の大統領親衛隊の脅威
しかし実際に戦闘が始まったらわずか72時間でイラク軍は壊滅壊乱潰走してしまったのはご承知の通り。
と言うことを踏まえて最近のアフガン報道を見るとまるで同様の傾向があることが分かる。
- 旧ソ連スペツナズ指揮官曰く、アメリカは勝てない
- 軍事評論家曰く、アフガンの兵士は世界最強である
- 殆どが山岳地なので近代兵器は役に立たない
- ビンラディンは地下47mの秘密基地に隠れている
- アフガン兵士はみんな対戦車砲を持っているから米軍のアパッチヘリは近付けない
ビンラディンは毎日のようにアジトを変えていると断言する評論家が同じ口から地下要塞のことを言う。毎日移動できるぐらい沢山の地下要塞が用意されているというのか??
そもそも三年間雨が降っていない不毛の地なんだから、完全な国境封鎖・経済封鎖をすれば兵糧攻めだけで崩壊するではないか。
ベトナムで懲りたアメリカはソ連が何故アフガニスタンで敗北したのかについて、その理由を徹底的に調べているに決まっているではないか。
もっと素人っぽいことを言うコメンテーター(大学教授だったりする)も居る。彼曰く、今は衛星電話やGPSSやインターネットがあるから誰でも(つまりタリバンでも)米軍の所在地や軍事情報を入手掌握出来ると来たもんだ。GPSS衛星はアメリカ(軍)が管理しているのである。最近、軍事的な判断で民間用のGPSSが受信できる情報の精度が上がったが、それはアメリカがプログラムを変更したからである。と言うことは、アメリカが逆の方向にプログラムを変えれば、民間用GPSSの精度を落とすのは簡単なのである。逆に言えば、今でも軍事用のGPSSの精度は民間用とは桁違いのはずなのである。その精度は湾岸戦争から10年経過しているのだが桁違いに向上していて当たり前である。
そしてアメリカの軍事偵察衛星をタリバンが傍受するなんて事は絶対に出来無いし、インターネットでアメリカ軍の作戦情報を知ることなんか出来るわけがない。
ついでに言えば地下47mの地下要塞を破壊するバンカーバスター・ミサイルは既に開発配備済みである。これは湾岸戦争を教訓に開発されたものである。
その上、慎重居士のパウエル国務長官が軍事作戦を仕切るはずなのである。彼は本質的に軍人だから負ける戦いは絶対に始めない。 |
何故こう言う混乱が起きるかというと、それは評論家連中やニュースキャスターが二つのことを混同して解説するからである。
- アフガニスタン(タリバン)に対する戦い
- テロリズムに対する戦い
この二つは全く違う。ビンラディンを匿うタリバンをビンラディンと同一のものと考えれば相手が見える戦争になる。これについてはアメリカ軍が本気になれば勝てる。
ソ連が負けたのは大義名分が不明確で士気に劣り、しかも10万人の兵力の大半をイラン国境などに貼り付けたからだと言われている。ベトナムでアメリカが負けたのは兵力の逐次投入という大失敗をやらかしたからである。さらに中国との関係から北ベトナムに対しては空爆だけで済ませようとしたのも敗因である。このような戦略上の過ちがなければアメリカは勝てるのだ。何しろ戦力が違いすぎる。
たった今入ったニュースによればアラブ首長国連邦がタリバン=アフガニスタンと国交断絶した。これでタリバン政権を承認しているのはサウジアラビアとパキスタンだけである。となれば、今やアメリカがタリバン政権をビンラディン(とその組織=アル・カイーダ)もろとも軍事的に殲滅したとしても国際的非難は殆ど発生しないことを意味する。
しかし世界中に分散拡散しているテロ組織を全て壊滅することは絶対に不可能である。こちらはいつまで経っても相手が見えないからである。
「Operation: Infinite Justice:無限の正義作戦」の『無限』の意味がこれで分かる。タリバンを殲滅し、更に世界中に分散しているテロ組織を「無限の時間」をかけて追いつめる作戦なのである。 |
トマホーク・ミサイルは一発200万ドルだそうである。しかし、こんなことで驚いてはいけない。原子力空母の必要経費は一日100万ドル=つまり1億円である。戦争があろうが無かろうが一ヶ月で30億円かかるのである。アメリカは今回の作戦で4隻の空母を貼り付けるらしいので、それだけで一ヶ月で120億円かかるのである。戦闘となればもちろんお金はもっともっと消費される。アメリカ議会が400億ドル(4兆円)の特別支出を認めたのも当然である。
戦争というのは本当にお金が掛かるものなのである。 |
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