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新発想試作第1号機@某スタジオAスタ
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ベースとギターは全く違う楽器である。だからエフェクターについても求めるものが全く違う。これは当たり前のことなのだが、世の中の全てのベース用のエフェクターは機能面については何故かギター用を基本に考えられているという事※に最近になって突然、気が付いた。 |
※一応、付記しておくが、DoromPATIO HomePageに書かれているギター/ベース用のエフェクターに関する蘊蓄かんちくは全てストンプボックスか床置き式のデジタルマルチについてだけの話であり、ラックマウント系については買う予定も予算もなければ、そもそも触ったことも使ったこともないので一切、考慮していないという点には留意のこと |
そもそも、ギタリストがエフェクターに求める機能で一番大事なことは演奏中に操作しやすいことである。何故なら、エフェクターを使うギタリストは曲の中で何回か(人によっては何10回も)エフェクターの音色を切り替える=頻繁にエフェクターのフットスイッチを踏む=からである。 |
ではベーシストはと言うと、余程特殊なアレンジでない限りはひとつの曲の中で音色を何度も切り替えると言うことは普通はあり得ない。それどころか、ある特定のバンドがライブなどで曲ごとにベースの音色を変えると言うことも、筆者的には余り考えられない。懲りに凝って作り込まれたスタジオ制作の作品であっても、曲ごとには様々なベース・サウンドが使われるが、一曲の中でベースのサウンドが次から次へと変化すると言うことは滅多にない(と言うか、咄嗟に具体例を思い付かないのだから例外的と言うこと※)。そもそもベースはその名の通り音楽の土台を成すものであるから、がっしりと安定して楽曲を支えるのが本来であり、その音色がころころ変わったら音楽にならない。つまりベーシストは(あるいは少なくもとベーシストであるときの筆者は)ベース用エフェクターに演奏中の音色切換えの利便性は求めない。何故なら、そんな機能は全く不要だからである。 |
※最近の音楽シーンについては興味も知識もないので事情が違うかも知れないが、そんなことはどうでも良い |
それでは筆者がベースを弾く場合のサウンド・バリエーションの方はどうなっているのか? そこで、ここ数年の自分の演奏を振り返って冷静に分析すると(って程、大袈裟なことじゃないが)実はたったの二種類しかない。 |
- LED ZEPPELINのJohn Paul Jonesを理想とする、どこまでも図太く、高域が押さえられた、だがしかし、輪郭のはっきりしたヘビーなベース・サウンド(筆者的には、実はベースの音色はこれだけで良い)
- The Joint Venturesで演奏する時だけの専用となる固めのサウンド(要はトレブルを持ち上げていると言うこと)。それと言うのも、筆者は100%=指弾きだが、オリジナルのThe Venturesのベース(=Bob Bogle)はピック弾きだからThe Joint Venturesの他のメンバーから「ピックで弾いたような音」を要求されるからである※
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※この件に関しては更に「モズライトのベースを買え」と言う筆者的には困ったちゃんの要求の方がはるかに問題である【苦笑】。The VenturesやThe Beatlesのコピーバンドはモズライトやエピフォンやリッケンバッカーやヘフナーやグレッチが必要になっちゃうのだ【爆】 |
ところが、これまではベース用のエフェクターがZOOM 708II BASSだから、ついつい、余計なパッチ=プリセットを作ってしまっていた。具体的に箇条書きにすれば、ZOOM 708II BASSには下記のプリセットが用意されていた。 |
- 上記のJohn Paul Jonesサウンド
- 上記のThe Ventures専用のサウンド(指弾きなのにピック弾き風に聴こえるサウンド)
- スラップ用(お遊びにしか使わない)
- Leland Sklarを理想とするサウンド(トレブルをうんと効かせたジャズベー系。典型例はYumingの「中央フリーウェイ」。John Paul Jonesサウンドの対極として筆者が大好きなサウンドだが演奏の粗が目立つので使うに使えない=あるいは使うのを躊躇するサウンド【苦笑】)
- ジャコ・パストリアス風(ZOOM 708II BASSの「デフレット」を基本にしたもの)
- コーラス系(お遊びにしか使わない)
- フランジャー系(同上)
- ジャック・ブルース系(ベース・ディストーション)
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しぃかぁしぃ。実際にバンドで演奏するときに使うのは1と2だけなのだ。アレンジ上の特別な要求がない限り、筆者としては1しか使わないのだ。だったらベース用デジタルマルチなんてものは不要なのである。 |
しかも。デジタルマルチにはベースに使う場合に非常に気になるサウンド的な大きな欠点がある。それは量子化ノイズである。難しい理屈の説明は省略するが(ZOOM 708II BASSレベルの製品では)非常に弱くデリケートに指弾きした場合に、ベース音の背景にがっかりするほど大きなヒスノイズのような雑音が乗るのである。しかも、この量子化ノイズはデジタルマルチ内蔵のノイズリダクションでは原理的に除去できない。なぜなら量子化ノイズは演奏音と一緒に出るが、通常のノイズリダクションは楽器からの音が出ていないときの残留ノイズを除去するものなので、小音量での演奏時の量子化ノイズを消すことは出来ないからである※。 |
※それを消そうとするならHUSHやiSP DECIMATORが必要になってしまう |
※ちなみに、デジタルマルチをギターに使う場合は量子化ノイズよりもレイテンシー=動作の遅延=が大きな欠点となる。こういう点を考えてもギターとベースはまるっきり違う楽器であることが判る |
もう一つ。冒頭に述べたようにベースという楽器は演奏中にしょっちゅうエフェクターを切り替えるものではない。更に言えば筆者の場合は特定のバンドで演奏中に曲中は勿論、曲ごとにベースのサウンドを切り替えると言うことも全く無い※。と言うことはつまり、そもそも、筆者の足元にベース用のエフェクター(のフットスイッチ)がある必要は全く無いのである。 |
※エフェクターによって音色をガラッと切り替えることはしないが、ベース側のトーンやピックアップを切り替えることはある。ネック側のピックアップだけならポップで丸い音になるし、ブリッジ側だけなら固い音になるし、トーンを絞ればタップ音を押さえられるのでバラードなどのバックに良い。しかし、これらは微調整であり「気分」である |
それどころか、実はベースを弾いている場合は足元のエフェクター(あるいはフット・コントローラー)はとっても邪魔なのである。何故かと言えば、ベースは第一義的にリズム楽器であり、であるから筆者は身体をつかってリズムを取るのでベース演奏中はかなり動き回るしステップを踏む。だから足元に何かあるのは邪魔以外の何者でもないのだ。と言うか、世の中のプロのベーシストのライブ演奏のDVDなどを見ても、彼等は演奏中はずっと身体を動かし、足はステップを踏んでいるのである。つまり、これはベーシストとしては余りにも当然のことなのである。そして、彼等の足元にフットコントローラを見掛けることは(筆者の経験では)無い。 |
※その点、リード・ギタリストはややこしい演奏中にはエフェクターの前から動けないから、立ち位置を殆ど変えないのが普通である。勿論、最盛期のエディ・ヴァン・ヘイレンのようにステージを走り回りながらの超絶テクニックという天才もいるが、彼の場合はエフェクターの切換えはステージ脇のテクニシャン任せの筈である |
と言うようなわけで、ここまで述べたことを総括すると、ベーシストにふさわしいエフェクターのイメージが見えてくる。 |
- 筆者の必要とする基本のベースサウンドは一種類である
- 特定のバンドでは別の音色を使うが、そのバンドで演奏中に音色を切り替えることは絶対にない
- ベース用のエフェクターは足元にある必要がない
- と言うよりも足元には無い方がよい
- 安物のデジタルマルチでは理想とするサウンドは得られない(当たり前だ)
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だったらギター用とは全く違う筆者独自の考え方によるアナログ的な=つまりはストンプボックスで組んだベース専用のエフェクターシステムを考えてみる価値があるはずである。 |
そして実際問題としては「考える前に思い付いちゃった」のである、どういうシステムにすればよいかを【爆】。 |
- ZOOM 708II BASSは自宅練習専用と割り切る(つまり、今後、スタジオ練習やライブでは使わない)
- 新規導入したXotic Bass RC-Boosterとチューナー(これは別の意味で必須)だけのシステムを考える(シンプル・イズ・ザ・ベスト)
- これをベースアンプの上にセット出来るものに組み上げる(足下には何も置かない)
- ベース演奏中は動き回るんだから、やっぱりワイアレスを標準とする(から、それも組み込んじゃう。そうすれば足元にのたくるシールドケーブルも無くなる)
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かくして、早速、それを作り上げ【爆】、その日のバンド練習にいきなり持ち込んで使ってみた(このページの冒頭、並びに下の写真)。手持ちのチューナー=BOSS TU-12=はNew dpGuitarSystemに組み込んでいるので、ベース専用にTU-8(TU-12より安価で最初からギターとベースの両方に対応しているクロマチック・オート・チューナー。実売=4,000円強)は新たに行きつけの吉祥寺ロックインで購入した(のは練習の数時間前【苦笑】)。 |
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Ibanez SR-380+Samson AirLine
Xotic Bass RC-Booster+TU-12
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アンペッグのベースアンプ@某スタジオ
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結果はどうだったかと言えば、70点。具体的には以下の通り。 |
- セッティングは完璧(足元に何もないこと。操作性。そしてセットと片付けの容易さの全て)
- 当たり前だが量子化ノイズのないクリアーなサウンド
- しかしコンプレッサー/リミッターがないので音量のばらつき、音の伸びなどに関しては大いに不満有り
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そうなのである。今どきのベーシストにはコンプレッサー/リミッターは必須なのである。安物デジタルマルチ=ZOOM 708II BASSでも、全てのプリセットにはコンプレッサーを噛ませていたわけで、それが無くなると、とっても困るのである。 |
例によって蘊蓄かんちくを書けば、まず、エレキ・ベースという楽器はエレキ・ギターよりもはるかに質量のある弦を鳴らす=強制振動させるのでダイナミックレンジ(一番小さい音と一番大きい音の幅)が広い。その上、指弾きの場合はピック弾きよりも演奏方法のダイナミックレンジが広い(指でなでるように弱く弾く場合と思いっきり引っかけ気味に強く弾いた場合の音量差はピック弾きよりはるかに大きいと言うこと)。さらにスラップ(日本語英語ではチョッパー奏法)の場合は(特に「プル」では)弾いている本人がびっくりするほど、でかい音がする。 |
昔々のロック系のエレキベース奏者はピック弾きが殆どだったから上の問題は関係なかったのだが、今どきはピックでベースを弾く方が珍しい時代(筆者が思い付くのは前述のThe Ventures以外にはDeep Purpleのロジャー・グローバーぐらいである)だし、スラップも当たり前に使うわけだから、この「広すぎるダイナミックレンジ対策」つまり「コンプレッサー/リミッターの使用」は必須・必然・当たり前なのである。 |
※ちなみにベーシスト本人がコンプレッサー/リミッターを全く使っていないとしても、その彼がレコーディングをすれば100%、レコーディング・エンジニアがコンプレッサー/リミッターを掛ける。さもなければベースの広大なるダイナミックレンジをCDに納めることが出来ないからである。同様にライブの場でもDI経由でP.A.に送られるベースサウンドにも当然のようにコンプレッサー/リミッターが掛かっている |
つまりつまりつまり、筆者は良質の単品=ストンプボックス系のコンプレッサー/リミッターを新規導入する羽目に陥ったのである【爆】。これを墓穴を掘るという。 |
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