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2007.08.15[水]
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Tips of Guitars - ピック - pick - DoromPATIO
■ エレキギター最新事情雑感
Tips of Guitars - DoromPATIO
愛機=GM8Rの最新状態

楽器店に行くと実に様々なデザインのエレキギターが陳列されているのだが、それらを大胆に分類すると、実はたったの三種類しかない。
  1. 大きく分けてストラト系
  2. 大きく分けてLes Paul系
  3. その他

事ほど左様に、Fender StratocasterとGibson Les Paulのふたつはエレキ・ギターと言うジャンルを超えて、近代工業製品を代表するグッド・デザインと断言して良いほどの名作なのである。しかし、逆に、それだからこそ、Fender社もGibson社も、それを超える(あるいは完全に取って代わる)新しいデザインとブランドの新作を出すことが出来ない。これではまるで、30年前のVW社(フォルクス・ワーゲン。当時、VWはビートルのイメージが強すぎて、後継車=GOLFの市場導入に苦労していた)と同じである。

上の極端な分類の「その他」の中にも、勿論、それなりの市場シェアなり人気・定評のあるモデルもある。それはつまり下記のようなものである。
  • Fender テレキャスター系
  • Gibson SG系
  • Gibson ES-335系
  • エピフォンのセミアコ系
  • モズライト(The Ventures系。でも日本だけの話だろう)
しかし、誰がどう考えたって、ストラトとLes Paulに比べればマイナーである。世界的に売れているであろうIbanezの一連のモデルだって、分類的にはストラト系に括られるので、その他には入らないと思う(あくまで筆者の独断と偏見による分類)。

とまぁ言うようなわけであるから、Fender社もGibson社も結局はストラトとLes Paulをメインに商売をするしかないので、派生モデルがやたらめたらと増える。派生モデルとは下記のようなものである。
  • 色違い(塗装、使用木材、仕上げ、他)
  • 仕様違い(ハードウエア、ピックアップ、電気系、他)
  • リイッシュー・モデル
  • アーティスト・モデル

これらのうち「色違い」と「仕様違い」は単純な(或いは必然的な)バリエーションの追加だから別に問題はない。例えばストラトをハードロックで使う場合に、ブリッジ側のピックアップをハムバッカーに変える(いわゆるS-S-H)とか、内容も大抵の場合は実用的だからである。
これに対して、リイッシュー・モデルは筆者に言わせれば「それって一種の自己否定じゃない?」と言いたくなるようなものである。リイッシュー・モデルとは、自分の会社の過去の特定年代のモデルを再現したものである。これ、楽器だからまかり通っている商品企画だが、例えば自動車メーカーが(例えば日産が)昔の特定のモデルを(例えばケンメリのスカイラインを)発売するようなことなのだ。ケンメリは名車でも何でもない駄作だが、明らかに名車だった1960年代後半のBMW 2002tiiとかAlfa Romeo 1750GT Veloceを21世紀になってから再発売するのと同じ事である。

これのどこが自己否定か? Fender社もGibson社も(BMWもAlfa Romeoも)れっきとした企業である。その製品は楽器といえど近代工業製品であり(クルマは近代工業製品の代表である)、新しい製品は過去の製品よりも良くなっていなければいけない。でなければ、現在の製品を継続販売する意味がない。あるいは新製品を出す意味がない。変更も進歩も進化もないのであれば、そのまま作り続ければよいのだから。ところが、自ら昔のモデルの焼き直し=リイッシュー・モデル=有名な、あるいは定評のある年代の特定の製品の再生産モデル=を売ると言うことは、つまり、今現在の自社の製品ラインを否定することになるはずだと思うからである(古いクルマの場合は、そもそも安全基準で販売できないし、エアコンも効かないから乗っていられない)。

エレキギターは何処まで行ってもストラディバリウスでは無いと筆者は思う。現代のストラディバリウスを目指すなら個人工房が頑張ればよい。それはギターも同じである。ギター業界の2大巨頭自身が、いずれも「過去の名器の再現」をするのは、より良くて新しいものが作り出せないからであり、また、リイッシュー・モデルは高く売れる(つまり儲かる)からであるに違いない。勿論、お金の余っている人が何を買ってもそれは自由であるが。
もうひとつの「アーティスト・モデル」にも色々ある。昔(筆者の感覚では30年前)はそんなものはなかったから、好きなギタリストの数少ない写真を参考に、しこしこと改造をしたものであるが、今はお金が有れば、そのまんまのものが買える。例えば(弾ける弾けないは別にして)イングヴェイ・マルムスティーン大先生のスキャロップド・フィンガー・ボードだって手に入る。ステッカーを貼ったり塗装をしなくても初期のバン・ヘイレンと同じカラーリングのギターが手に入る。

と、ここまでは、ブランドもので言えば「ケリー・バッグ(Hermes:グレース・ケリーがオーダーしたものと同じデザイン)」や「バーキン(Hermes:同、ジェーン・バーキン)」と同じ事であり、マーケティング=商売として普通に有り得ることだから何も否定はしない。ギター少年は憧れのギター・ヒーローと全く同じギターを弾きたいのであるからして。

ところがである。最近は「常軌を逸したとしか思えないアーティスト・モデル(c)筆者」が出始めた。Fenderのジェフ・ベック・エスクワイアやバン・ヘイレン・モデル、クラプトンのブラッキー(ストラト)、あるいはGibsonのJimmy Page リイッシュー SGダブルネックなどは、いずれも車が買える値段(180万円前後)である。何故かと言えば、これらのモデルは、それぞれのオリジナルの精緻・精確(あるいは病的)なるレプリカであり、傷、塗装のはげ方、金属部品の錆、プラスチック部品の変色、煙草の焼け焦げ、ピックを止めるための汚い両面テープなどに到るまでの何から何まで全てを余すところ無く再現しており、弾くための楽器というよりは「純粋な飾りもの」みたいな作りだから製造に手間が掛かる=だから高いと言う理屈の商品だからである。
※バン・ヘイレンのサイトのビデオで本人のお喋りとギタープレイが見れるが、喋りは舌癌の影響なのか明らかに舌が回っていないのがちょっと悲しい

こうなるともう筆者の価値観では理解の外を通り越して「マスター・ビルダーってのは素晴らしい楽器を作る職人じゃなくて偽物の骨董品を作る連中か?」ってなぐらいに呆れてしまうのである。

だってそうだろう。オールドは本物だから価値がある。アーティスト・モデルは現物だから価値がある。あるいは仕様が同じで価格が手ごろなら意味がある(イミテーションのアンティック家具などはこの分類。本物は高くて買えないから存在価値がある)。しかし、レプリカは何処まで行っても(たとえ、オリジナルの製造メーカーが制作したところで)模造品(精巧な偽物。あるいは「まがいもの」)であることに変わりはないのだ。そう言うものは、例えばロック・カフェとか、博物館とか、そう言う場所のガラスケースの中での陳列には意味があるかも知れないが、個人が金を出して購入して飾って楽しむのは(安ければ別だが)やはり理解できないのである。本物なら判るがレプリカに過ぎないのだし、そもそも、楽器は弾いてなんぼのものなのである。しかも馬鹿高いのだ。しかもしかも、それを素人が弾いたって、憧れのギター・ヒーローと同じようには弾けないし、同じ音も出ないのである【笑】。

ついでに書けば、アンプやエフェクターもリイッシュー・モデルのオンパレードである。だから、最近のエフェクターは「昔の何々を再現し更に良くしました」が一番多く見掛ける謳い文句。これも明らかに技術的には退歩としか言いようがない【きっぱり】。ギターアンプも「初期と同じポイント・ツー・ポイント配線云々」である。てぇことは、そのメーカーの中期と後期あるいは新製品はメーカー自ら良くないというお墨付きなのか?
要するに。ギターも、そしてアンプやエフェクター(デジタル系を除く)も、いずれも基本的には完成された商品である。パソコンやデジタル家電や携帯電話のように毎年毎年画期的な新製品が出るわけではない。今までより100倍も弾きやすいギターとか、iPodの大きさでMarshallの3段スタックと同じ音が出るアンプなんてものは未来永劫発明あるいは発売されない。だから売り手側は何とかあの手この手で目先を変え故きを温ね(ふるきをたずね)新しきを求め様々な(大きく分ければリイッシュー系が主体の)新製品を市場に出すわけである。

それは企業の勝手だが、どー考えても、いささか(否、とんでもなく)方向性が間違っていると考えるのは筆者だけではないのではないだろうか?

ついでに言えば、デジタル系も同じ状況にある。何故なら、デジタル系エフェクターの売り物は全て「昔の名機のシミュレーション、エミュレーションのオンパレード」だからである。その昔、沢山のミュージシャンが、そのユニークなサウンドに感動したYAMAHA DX-7に代表される個性やクリエイティビティは皆無なのである。昔(主として70〜80年代)と同じ音をどうやって出すか?が目的となっているのだ。だったら昔と同じ回路のアナログでいいじゃん。

それにしても、傷だらけでボロボロのジェフベック・モデルやロリー・ギャラガー・モデルを「新品」で購入するってのはやっぱりわからん【きっぱり】。
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