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■ Fender Telecasterのオーバーホールと小改造 |
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Fender Telecaster - Serial No. S829926 - 1978年製 - made in U.S.A.
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何の偶然か、筆者がテレキャスターもどきを作り始めてすぐぐらいのタイミングで、友人から彼の本物のテレキャスターのメンテ依頼が来た。前にストラトのメンテをした彼である。
彼は筆者がメンテしたストラトもどき(ヘッド部にブランド名がないがTOKAI製)がすっかり気に入ってしまい、大昔に購入した本物のテレキャスターは全然弾いていなかったのだが、今年のライブで急に使いたくなったとのこと。
しかし久々に引っ張り出したら汚れやサビが酷いと。
また、ボリュームを絞ったときに音がキャンキャンするのでバッキングに邪魔で困るので、これが何とかならないかと。
テレキャスターはいわゆるオールドタイプの場合、ボリューム・ポッドが何故か1MΩになっており(シングル・コイル・ピックアップのボリューム・ポッドの抵抗値は普通は250KΩ)更に、いわゆるひとつのハイパスコンデンサーが組み込まれている。この二つの相乗効果により、あのテレキャスター独特のカキーン、キャイ〜ンなトーンが生まれるのだが、友人の彼は特にボリュームを絞った時に高域が丸まらずに残るのが歌バン系バンドではサウンド的に邪魔だというのである。
なるほど。 |
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この頃のテレはストリングガイドが2つなんですな。この写真は清掃前
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筆者の嫌いなクルーソンのマシンヘッド。磨き上げた後の写真
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となれば話は簡単。ハイパスコンデンサーを回路から外してしまえばよいのだ。
また筆者としては、テレキャスもどきの改造中なので本物のテレキャスターを色々と調べられるまたとない機会でもある。
と言うわけで作業を快諾。
我が家の近所のデニーズで昼食を一緒に摂りながら談笑しつつテレキャスターを受け取り。
持ち帰って早速、撮影しながら細部をチェックしてみた。そして我が超安物の中国製テレキャスもどき君(なんたって14,000円。友人の本物は少なくとも、当時で22万円ぐらいはした筈)との比較も注意深く実施した。 |
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意外にも、かなりいい加減なネックポケットのサイズであることを発見。それにしても汚れている。殆どはカビだろう
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ここも本当はネックサイドとボディサイドが「ツライチ」じゃないといけないはずでは?
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かなりすり減っているフレットと汚れ放題のメープル指板
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L字型のプラグが使えないテレ独特のアウトプット端子(清掃前)。挿入部が奥に引っ込んでいるのでL字プラグだと奥まで入らないのである
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それにしても汚れが酷い。打痕は仕方がないとして、経年変化でタール状になった黒いプラスティック系の付着物、おそらくはカビであろう塗装面全般に見られる斑点状の汚れ、金属部のサビ、メッキ部の曇り、メープル・フィンガーボードの塗装の剥がれと汚れ、フレット表面のざらついた傷などなど、所有者君はじぇんじぇん普段のメンテナンスというものをしないらしい【爆】。
それもあるし、構造チェックと言うこともあるので、結局、ネックを外し、コントロール・プレートを外し、ブリッジ・プレートを外し、パーツ毎にそれぞれ、最適な洗浄剤などを使って綺麗にすることとする。
- ブリッジ:KURE 5-56をぶっかけてしばらく放置してからガスコンロを綺麗にするときに使う真鍮製のブラシでゴシゴシとこすり、次に歯ブラシ、場合によっては#400〜#600ぐらいの耐水サンドペーパーで磨く。ブリッジは手汗がもろにかかる部分なのでサビが出やすいのである
- コントロール・プレートなどのメッキ部:田宮のコンパウンドを金属磨き代わりに利用して磨く。サビ浮きの酷いところは番手の細かいサンドペーパーを使用し、後でKURE 5-56を掛けて磨く
- フレット:指板をマスキングしてから同じく田宮のコンパウンドとウエス(ぼろ布)で磨く
- メープル指板(フィンガーボード):フレットとの境目などに汚れがこびりついているので、ジョンソン・プレッジ(愛用の家具磨きスプレー)をぶっかけて歯ブラシでこする。それでも駄目ならつま楊枝の先で汚れを掻き出す。塗装が剥がれた部分に大きな段差がある場合は耐水サンドペーパーで磨く
- ボディ:ジョンソン・プレッジ、イソプロピルアルコール、シンナーなどを少量ずつ適宜使用して汚れを落とす。どうしても落ちない汚れは耐水サンドペーパーで削り落としてから、コンパウンドで磨いて艶を復活させる。最後にもう一度、ジョンソン・プレッジで磨き上げる
いやはや、ここまで汚れていると結構大変。まるで染み抜き専門のクリーニング屋さんになったような気分である【苦笑】。
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まるで緑青が吹いたように見えるコントロール・プレート部。勿論、清掃前
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コントロール・プレート裏の配線状態。右の黄土色の大きな丸いのはトーン回路用のコンデンサー。左のちっこいのが問題のハイパスコンデンサーである
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このテレの持ち主は、このハイパスコンデンサーが嫌いなのだ
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前述の通り、清掃作業と同時並行的に本物とまがい物の比較チェックも行なったわけだが、作りは「いかにもアメリカン」と言うのが第一印象であり結論。楽器を大量生産の工業製品として成立させた合理性=言葉を換えれば手抜き=が、あちゃこちゃに見られる。イマドキの基準で言えばキャビティ内のシールド処理などは何もされていないのでノイズは大量に出ているし(我が家のギター用ヘッドフォン・システムで確認)、ネック・ポケット部分の工作精度はお世辞にも高いとは言えない。
しかしネックはしっかりとしており、1978年製だから既に作られてから33年も経っているわけだが、反りや捻れなどはない。フレット浮きなども皆無。
要するに頑丈なアメ車みたいなもんだろう。
ちなみに、それと同じような意味で重量は相当なもの。軽く4kgを超え、筆者所有のGibson Les Paul Deluxeと同等であり、アラカン世代には重すぎる。ちなみに、筆者のLes Paul君は更に古い1968年製。今年で43歳【爆】。つまり、筆者より16歳も歳下である【笑】。 |
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シールド対策をやる場合には真鍮板と繋がっているワイアを切って別アースを取る
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同じく研究のためにネックを外して細部をチェック。ネックを固定する4つ以外に塗装時の固定用(中央ちょっと下)、ボディの配線用(左の奥)、そして理由不明の穴(右奥のネック固定の穴の左側)がある
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あれやこれやの作業で丸一日が潰れたが、結果は写真で分かる通り、文字通り「見違える様に綺麗に」なった【♪】 |
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カビだらけのピックガード。写真では分からないが、指板もフレットもかなりの汚れ
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残るは問題のハイパスコンデンサーである。
ヘッドフォン・チェックをすると確かに半端ないハイ上がりである。ノイズのレベルについては20数万円の本物のテレキャスターも、改造前のすっぴんの14,000円のテレキャスターも大差なし。どっちも「いかにも無対策のシングル・コイル・ピックアップで〜す」的なノイズが出ている。
出力はどっちも似たようなもの。かなり低め。
サウンドも似ているが、本物の方が明らかに音がきつめ。ハイパスコンデンサーが効いているから、ボリュームを絞れば絞るほどにキンキンになる。特にミックス・ポジションでのキンキンぶりが凄い。友人君は(ピックアップ切換えレバーとボリューム・ポッドが近いのでなるべくピックアップを切り替えず)ミックス・ポジションを多用するとのことで、それなら余計にキンキン・サウンドに閉口しているのは分かる気がしないでもない。 |
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改めて問題の0.001μFのハイパスコンデンサーを確認
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と言うわけで写真の通り、後のことも考えて、ハイパスコンデンサーの片側の足の半田を外して宙ぶらりん状態にして絶縁してお仕舞い。こうしておけば、いつでも数分で元に戻すことが可能である。 |
なお、ネックのRはかなり強めなのでハイポジションの弦高は殆ど下げられない。しかし、ヒール形状がああだから、どっちにしろハイポジションは弾けないので関係ないと言えば関係ない。ヒールカットしていないテレキャスターで平気でハイポジションでアドリブ・ソロを決める海外のスーパー・ギタリスト達はきっと、よっぽど馬鹿でっかい掌と馬っ鹿長ぁ〜い指の持ち主であるのに違いない【きっぱり】。
なおなお、ブリッジは駒が弦と直交するタイプの普通の3-wayブリッジなので完全なオクターブ調整は無理なのだが、それでも、ネットで色々と調べて妥協点の見つけ方を研究して、そこそこ納得できる状態にはなった。少なくとも普通に弾いていてフレット音痴に感じるようなことはない。
蛇足:普通、ブロンド・カラーのテレキャスターのピックガードは黒である。しかし、このテレキャスターは白である。変である。穴の位置も微妙にずれているようで、数カ所にわずかな浮きも見られる。
この点について所有者ご本人に確かめたところ筆者の疑問は氷解した。
所有者君はその昔からテレキャスターと言えばゴールデンカップスのエディ潘と言うイメージとあこがれがあったんだそうな。
だから今から33年前にテレキャスターを手に入れて最初にしたことはピックガードを黒から白に変えることだったのだそうである。
趣味や価値観は全く持って人それぞれ様々なのであ〜る【爆】。
後日談:その後、引き取り時に「え、これ、俺のギター?」と綺麗さにびっくりした所有者の彼だが、自分のバンドの練習でテレキャスターがバッチリなサウンドに変身したことを確認して大満足とのことである。
ちゃんちゃん♪
(^^)v |
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