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筆者のような「典型的へぼギタリスト」の場合、ギターは可能な限り弾きやすくなければいけない。そして、弾きやすさの大きな要素である弦高について言えば、筆者は、いわゆるひとつの「ベタベタに低い」のが好みである。 |
しぃかぁしぃ〜。弦高は単純に下げればよいと言うものではない(のは書くまでもない)。弦高を下げ過ぎればフレット・ポジションによってはビビり音が発生することになるし、チョーキング時の音詰まりも発生する。弦高を下げすぎれば、仕舞いには完全な音切れなんてことにもなる。そもそも、ビビり音が発生する状態なら、間違いなくサステインは落ちていることになる。 |
ここから先は人それぞれに考え方が違う。弦高調整は全く各人各様=好みの世界なのであり、物凄く大きく分ければ以下のいずれかに分類されるであろうが、(1を除く)それぞれに根拠があり、どれを選ぶかはその人の勝手だからである。
- 買ったまま or 無頓着 or 関心無し or 知識無し(この分類に属する人の99%は下手くそ、あるいはギターを弾いてはいけない人だろうが、極希に「弘法筆を選ばず」と言う場合も無いわけではない)
- 購入時よりは少しは弦高を下げて弾きやすく調整する派(大半の人は程度の差こそ有れ、ここに入るだろう)
- かなり低い弦高=ギターアンプを通した状態でちゃんと鳴っていれば問題なしとする主義の人(「かなり低い」には当然、幅があるが)
- かなり高い弦高=生音の鳴りの良さ至上主義の古典的で頑固な人(あるいはテクニックに自信のある人)
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筆者の場合、「べたべたに低い弦高」を好む理由は(前から書いているのだが)もうひとつある。それは、昔からずっと使っていたLes Paulの弦高が「べったべたに低い」のに「ちゃんとした音が出る」からである。しかも、このLes Paulについては、単純にTune-O-Matic Bridgeを下げただけなのに、ギターアンプを通す限りはビビりは無いし、サステインは充分だし、勿論、音切れもないのである。これはつまり、単純にこのLes Paulが「当たり」だと言うことであり、購入してから既に40年以上経つがネック調整も不要なのだから素晴らしい♪ |
しぃかぁしぃ〜。このLes Paulは例外である。そして、Les Paulは重い。4kgを大きく超える。シングルカッタウェイだからハイポジションが弾きにくい。だから、ちょっと前まではGM8R、最近はPeavey HP EXPを使っているわけである。しかししかししぃかぁしぃ〜。これらのギターはLes Paulほど簡単には弦高が下げられない。単純にブリッジを下げただけでは音詰まりなどが起きるからであ〜る。 |
さて、そこで。以前に弦高のバランスが悪いので2弦を相対的に高くしたわけだが、もう一度、抜本的な弦高調整をすることにした。まず、今回の改造では1弦と2弦の駒にプラスチックの下駄を履かせて基準の高さを高くする。下駄にするパーツは以前に古いiPodの内蔵充電池を取り替えたときの付属の工具=旧型iPodのアクリルとステンレスの勘合部に差し込んで蓋を開けるためのもの=である。その理由は単純にサイズと硬度と質感がちょうど良かったからである。 |
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いわゆるGibsonタイプの駒。奥に写っているパーツで下駄を履かせるのだ
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さて、それでは、どういう論理でPeavey HP EXP君の弦高を下げるのか? これは以下の実験で明らかになった。
- まず、以前の2弦の弦高だけを嵩上げする真鍮のパーツを外す。つまり、オリジナル状態に戻す
- この状態で1弦がビビらないギリギリまで弦高を下げる(ブリッジの1弦側の高さ調整ネジだけを回す)
- この状態でハイポジションで音を出すと、2弦だけがビビる
- つまり、前回の2弦だけ弦高を上げたのはそれはそれで正解なのであることを再確認
以上をチェックしてから、以下の写真のような加工を行う。つまり、ブリッジのネック側に駒の高さより1mmちょっと高くなるように「下駄」を履かせるのであ-る。
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テールピース側の上から見たところ。この時点では溝は最低限の深さ
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でだ。ここからの調整と加工は若干、時間が掛かる。慎重にやらないと下駄を履かせ直さなければならなくなるからである。つまり……
- 写真の状態でブリッジの1弦側のネジを回して、弦高を可能な限り、目一杯下げてしまう
- 当然、この状態では(少なくともハイポジションでは)音詰まりどころか音切れ状態になるので、1弦だけを基準に、少しずつ弦高を上げる
- 既に2弦の弦高もオリジナルよりは嵩上げされているので、ベタベタと言えるぐらいに弦高を下げても1弦、2弦とも問題なし
- ところが。そうすると、今度は3弦のハイポジション(12フレット以上)がビビり気味になることが判明
- 念の為に4,5,6弦もチェックするがこちらは問題なし
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そこで下の写真を見てみると、3弦のオリジナルの「溝切り」がかなり深いことが判る。4弦は巻き線なので3弦よりはかなり太いから、駒自体の高さが3弦と同じであっても3弦よりは弦高が高いのは写真によって明らかである。逆に3弦は溝切りが深いので2弦と大差ない高さしかないことが判る。と言うことは、3弦の駒にも下駄を履かせるべきであるという結論になる。 |
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テールピース側から見たところ。相対的に、2弦と3弦が、最も背の高い3,4弦に近い高さになっていることが判る。しかし4弦(左端)と3弦を比べると3弦は明らかに溝に埋まった感じである
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Peavey HP EXPはGibsonタイプの設計なのでネックにはRが付いている。そのR(湾曲)とブリッジの駒が成すR(緩い「かまぼこ形」の湾曲)が正しい関係にあれば良いのだが、そうじゃなければビビり音の発生などが起きるし、チョーキング時の音詰まりの原因になる。とにかく、ここまでのチェックで明らかなのは、やはり3弦の駒の溝が深すぎてRに段付きが生じているということだ。と言うわけで、早速、3弦の駒も外して下駄を履かせる加工である。 |
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駒に瞬間接着剤で下駄を接着し、暫くクリップで固定して接着強度を高めているところ
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そして装着。今や3弦のビビりはないので今一度、弦高を下げる。1弦と2弦のビビリや音詰まりだけに配慮すればよい。結果、12フレットで弦高≒1.2mmでOKとなった。しかも、24フレットでも約1.2mmである。これは相当に低い弦高である♪ |
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右が12フレット。精密定規が左に傾いているので数値的には1.2mmぐらい
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ところで。これだけブリッジをいじっているのだからオクターブ調整もやり直しておいた方が良い。と言うわけで、Peavey HP EXPをBOSS TU-12(これは万が一のためにいつでもパッチケーブルと一緒にギグバッグに入っている)で厳密にチェック。 |
すると。なななな何と驚いたことに、5弦と6弦は調整範囲外であることが判明。をいをい、なんでだ? Peavey HP EXPを買ってすぐに弦を標準のゲージから筆者スペシャルの0095〜052と言う特殊な組合せに変えたときにはそんなことは無かったぞぉ〜〜っと。しかしとにかく。そのままならフレット音痴なんだからどうにかするしかない。 |
と言うわけで、さっきまでは弦高を個別に高くするためにブリッジの駒に下駄を履かせていたわけだが、今度は駒の位置をネック側に伸ばすために下駄を履かせるわけである。 |
ウルサいことを言えば(弦高を上げる方も、もちろんそうなんだが)下駄にする素材は弦の鳴りに直結することだから悩むところであるが、こんなものは幾らでも後で変更できるんだからまずはフレット音痴解消が先。つまり手持ちのプラスティック素材を適切なサイズに切断し、ゼリー状瞬間接着剤で固定してお仕舞い。なお、プラスティック部分には溝は切らない。直後に控える駒の溝への引っ掛かりで強いピッキングをしても弦落ちしないことを確認したからである。 |
以上の工作をしてからオクターブ調整をしたらバッチリであった。 |
追記@2009.05.31[日]:弦がちゃんと振動する限り、弦高は低ければ低いほど弾きやすいのは言うまでもない書くまでもない。そして、先日の調整=つまり、このページの作業の結果、12フレットで約1.2mmまでは下がったが、細かいことを言うと、ハイポジションの何ヶ所かでチョーキングをした時に若干の音詰まり(と言うかビビり)が発生していたので、暇な日曜日に色々色々試行錯誤をした結果、弦高を更に下げ、音詰まり(ビビり)が発生するフレットの該当部分にマジックインキで印を付け、弦を緩めてサンドペーパーで少し削ったらチューニングして調子を見て、まだビビっていればまたマーキングしてからサンドペーパーで削って……と言う超面倒なるシーケンス※を何度も何度も繰り返して、とうとう下の写真の通り、12フレットでほぼ1mmちょっとまで弦高を下げることに成功した♪ |
※超面倒な作業手順:サンドペーパーを掛けて、試奏して削り足りなければまた削り……を繰り返す=つまり、ちっとずつしか削らないのは、削り過ぎちゃったら大変なことになるからである |
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